マーケティングコラム
生成AI活用事例で学ぶ社内活用推進
“使われる状態”をつくる方法
生成AIの導入は進んでいるものの、「一部の社員しか使っていない」、「業務に定着しない」といった課題に直面していませんか?
本記事では、生成AI活用事例をもとに、社内で活用が広がらない原因と活用される状態を実現するための具体的な推進方法を解説します。
こんな方にお勧めの記事です。
- DX担当者
- 社内でAI活用を推進したい方
- 業務にAIを活用したい方

生成AIの進化により、情報収集をはじめ文章や画像作成など、私たちの身の回りでできることが増えています。日常生活の中でも生成AIを活用する人が増加し、読者の皆様の中にも生成AIの便利さを実感している方は多いのではないでしょうか?
こうした流れを受け、企業における生成AIの導入も進んでいます。
生成AI導入後に積極的に業務で活用している人がいる反面、「ほとんど使っていない」、「業務での使いどころがわからない」といった人も少なくありません。
このような個人間での生成AI活用のばらつきにより、全社的な活用に至っていない企業が多いのが実態です。
こうした状況を打開するには、単にAIを導入するだけでなく、社内で“使われる状態”をどのように構築するかが重要になります。
本記事では、生成AIの活用事例をもとに業務での活用を広げ、全社的な社内定着を実現するための具体的な方法を解説します。
1.生成AIが社内で活用されない理由:よくある3つの課題
近年、企業における生成AIの導入は急速に進んでいます。業務効率化や生産性向上への期待から、多くの企業が生成AIの活用に踏み出していますが、「全社活用できている」といえる企業は決して多くありません。
実際に、企業の生成AIの利用状況を見ると、回答した企業のうち、全体の45.0%が業務で何らかの形で活用している一方で、「全社的に利用が推奨され、幅広い業務で利用されている」と回答した企業は15.9%にとどまっています。
生成AIの利用状況:業種別(n=1,110)
![[イメージ]生成AIの利用状況:業種別(n=1,110)](../../common/img/marketing-guide/2026/202606_36/img02.png)
- 引用元 :一般財団法人日本情報経済社会推進協会(URL:一般財団法人 日本情報経済社会推進協会)
「企業IT利活用動向調査2025」結果分析」(外部サイトにリンクします) - 調査期間:2025年1月17日~1月24日
- 有効回答数:1,110社
この結果から、生成AIの活用は一部の部門やチーム、担当者に限定され、全社的な取り組みには至っていないケースが多いことがわかります。つまり、「生成AIの導入は進んだが、企業全体での活用には届いていない」というギャップが存在しているのです。
それでは、なぜこのような状況が生まれているのでしょうか?
その要因の一つとして考えられるのが、企業としての生成AI活用に関する「方針の未整備」です。
総務省の調査によると、日本企業において生成AIの活用方針を「積極的に活用する」、「領域を限定して利用する」と定めている割合は49.7%となっています。
その一方で、「方針を明確に定めていない」と回答した企業は31.8%、「わからない」と回答した企業も14.2%存在しており、合計すると46.0%にのぼります。
生成AIの活用方針策定状況(国別)
![[イメージ]生成AIの活用方針策定状況(国別)](../../common/img/marketing-guide/2026/202606_36/img03.png)
- 引用元 :総務省(URL:総務省)
令和7年版 情報通信白書 企業におけるAI利用の現状(外部サイトにリンクします)
こうした傾向は、米国、ドイツ、中国と比較して高く、日本では生成AIの活用方針が十分に整備されていない、あるいは社内での認識が浸透していない企業が多いことが示唆されています。
その結果として、生成AIは個々の社員の裁量に委ねられたまま利用されるケースが増え、組織としての活用が進まない要因となっている可能性があります。
生成AIは多くの企業で導入が進んでいる一方で、全社的な活用には至っていないケースが多いことはご理解いただけたと思いますが、こうした状況が生まれる要因は大きく3つに整理できます。
1. 活用状況のバラつき
生成AIを積極的に業務へ取り入れている人がいる一方で、「プロンプトがわからない」、「自分で作業した方が早い」といった理由から、ほとんど利用していない人も少なくありません。
また、ツールの導入にとどまり、業務プロセスの中に組み込まれていない場合も多く、「使いたいが使いづらい」状態が活用の停滞を招いています。
これらの理由から活用は一部の担当者に限定され、組織としてのノウハウ蓄積や社内への横展開が進まない状態に陥ります。
2. 環境が整っていない
生成AIの導入にあたっては、投資対効果の不透明さやセキュリティや著作権への懸念などが障壁となり、企業として生成AIを十分に活用できる環境が整備されていないケースも多々あります。
3. 人材が足りない
現場で生成AIの活用をリードし、具体的な使い方を示す技術的な習熟者や全社的な投資判断・方針策定を行う経営層の後押しがなければ、全社での生成AI活用は難しいです。
部門を横断して活用を広げる役割を担う推進者が不在の場合、成功事例が生まれても組織全体に波及せず、結果として全社への展開が進まない状況が生まれます。
生成AIの全社活用が進まない背景には、活用が個人にとどまってしまう点、業務で使うための環境が整っていない点、そして全社活用を推進する人材が不足している点といった、複数の要因が存在しています。
単にツールを導入するだけでは、こうした課題を乗り越えることは難しく、組織として使われる状態をどのように構築するかが重要になります。
では、これらの課題を乗り越え、生成AIを業務で効果的に活用していくには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
次章では、実際の生成AI活用事例をもとに業務で効果を生む使い方のポイントを解説します。
2.業務で効果を生む生成AI活用事例
生成AIは、業務のさまざまな場面で活用が進んでいます。
例えば、生成AIの活用事例としては、以下のようなユースケースが挙げられます。
- 社内検索:過去資料やメールの横断検索による情報収集の効率化
- 会議業務:議事録の自動作成や要約による記録業務の削減
- 文書作成:メールや提案資料のドラフト作成による作業時間の短縮
これらは特定の部門に限らず全社で展開しやすく、生成AI活用の起点となる代表的な事例です。
メールやチャット、ファイルなどの情報検索、会議の議事録作成やメール文案作成といった文章作成業務においては、生成AIを活用することで作業時間の大幅な短縮が可能です。
また、従来は専門的なスキルが必要だった画像や動画の制作についても、生成AIを活用すると短時間で高品質なコンテンツを作成できるようになり、個人の業務の幅を広げることにもつながっています。
このように、生成AIは業務の生産性向上と新たな創作活動の両面にメリットをもたらす存在となっています。
しかし、生成AIを業務で活用する際には、いくつかの注意点も存在します。
まず、生成AIの回答は必ずしも正確とは限らず、事実と異なる情報が出力される場合があります。
そのため、AIの出力結果をそのまま利用するのではなく、人の目で内容を確認し、必要に応じて修正することが不可欠です。
また、生成AIに入力したデータが学習に利用されるケースもあるため、社内情報や顧客情報などの機密情報を安易に入力することは避ける必要があります。入力してよい情報の範囲を明確にし、安全に活用することが求められます。
さらに、画像や動画などの生成においては、既存の作品に類似した内容が生成される可能性があり、意図せず著作権を侵害してしまうリスクもあります。そのため、生成物の利用にあたっては、権利関係の確認やチェックを行うことが重要です。
このようなリスクを踏まえると、生成AIを安全かつ効果的に活用するためには、社内でのルール整備が不可欠です。
具体的には、入力してはいけない情報の定義や利用ルールを明確にしたガイドラインを策定し、全社員に周知することが重要です。また、AIの出力結果をそのまま利用するのではなく、人の確認を前提とした運用を定着させることで、精度と安全性を担保することができます。
生成AIの活用は、ツールの導入だけでなく、運用方針の策定や啓蒙活動まで含めて初めて成果につながるものです。
こうした前提を踏まえたうえで、自社の業務に適した形で活用を進めていくことが重要になります。

3.生成AIを“使われる状態”にする:社内活用を広げる仕組みと取り組み
ここからは、弊社における生成AIの全社活用を推進した取り組みについて紹介します。
弊社では、生成AIの活用にあたりMicrosoft 365 Copilotを導入しています。
この生成AIは、WordやExcel、PowerPoint、Outlook、Teamsといった日常業務で利用するアプリと連携できる点が強みです。
さらに、Outlookのメール、Teamsのチャット、SharePointに保存された各種ファイルなどの社内データをもとに、AIが回答や分析を行うことができ、「自社専用にカスタマイズされたAI」として活用できます。
また、Microsoft 365 Copilotでは社内データを外部の学習に利用されない仕組みとなっており、セキュリティ面でも安心して業務利用できる点も全社展開を進める上で魅力的です。
こうした便利なAIを全社で活用していくためには、業務で成果が出た活用方法、「スモールサクセス」を社内へ展開していくことが重要です。
そのため、最初に生成AIに関する情報を共有する仕組みづくりに着手しました。
具体的には、SharePoint上に生成AIに関する情報を集約し、誰でもアクセスできる環境を整備するとともに、社内コミュニティとして「みんなで生成AI」というTeamsチャットを開設しました。
「みんなで生成AI」では、社員が生成AIを身近に感じ、関心を持てるようにするため、AIに関するニュースの共有や、業務での活用事例の紹介、AIを使って作成した画像や動画の投稿などを積極的に行いました。
社員のAIへの関心を高め、積極的な活用を促すために投稿に対して「いいね」が多く集まった社員にはプレゼントを設けるなど、参加しやすい仕組みを取り入れることで、情報発信のハードルを下げる工夫も行っています。
こうした取り組みによって、社内のAI活用に関する透明性が高まり、社員のAIへの関心が向上するとともに、ノウハウ共有が活発化しました。
その結果、AIを使ってみるという行動が促進され、生成AIの活用機運が社内全体で大きく高まっていきました。
当初はAI関連のニュース共有が中心でしたが、徐々に業務に直結する情報の発信へとシフトし、現在では実務で活用できるノウハウが蓄積される場へと進化しています。
さらに、生成AIの活用をより実践的に広げるために社内でプロンプト集を整備しました。
このプロンプト集はAI活用に習熟した複数の社員が実際の業務で効果のあったプロンプトを収集・整理したものであり、誰でもそのまま使える形で全社共有しています。
このプロンプト集を参照することで、生成AIの使い方がわからない社員でも簡単にAIを活用することができるようになるだけでなく、自身の業務に合わせたカスタマイズを行う際のベースとしても活用されるようになりました。
こうした取り組みの積み重ねにより、Microsoft 365 Copilotの社内利用率は、導入当初は全体の約9%にとどまっていたものの、啓蒙活動の実施後には54%まで拡大し、現在もさらに利用者が増え続けています。
今後は生成AIの活用領域を拡大しながら、個人の業務にとどまらず、部門全体の業務プロセス全体へと組み込んでいくことを目指しています。
弊社の取り組み事例
「デジタル化・DX推進展(ODEX)」セミナーレポート
生成AIを「導入して終わり」にしないために、実際に社内でどのように活用を広げたのかを具体例とともに紹介しています。レポートページからはセミナーでご紹介した資料もダウンロードいただけます。
https://www.toshiba-dmi.co.jp/news/odex-tokyo-report.html
生成AI活用推進ウェビナー動画
生成AIを業務でどう使い、どのように社内へ広げていくのか、実際の取り組みをもとに解説したセミナー動画です。
https://www.youtube.com/watch?v=P66D-fUa8EU(外部サイトにリンクします)
4.まとめ
生成AIは業務効率化や個人のできることの幅を広げられますが、導入するだけでは全社的な活用にはつながりません
こうした背景には、個人での活用にとどまってしまう、活用を推進する体制が整っていない、人材が不足しているといった課題が全社展開の障壁となっています。
このような課題を乗り越えるためには、業務で成果の出た活用方法を起点として、社内へ共有していくことが重要です。その上で誰もが使える環境やAIを利用する際のルールを整備し、活用ノウハウを蓄積・共有する仕組みを構築することで生成AIは初めて“使われる状態”になります。
生成AIの活用推進はツール導入ではなく、社員を動かし、組織を変革する取り組みといえるでしょう。
本記事でご紹介したように生成AIを導入して終わりにせず、使われる状態を根付かせていくことが、これからの企業には求められています。
自社に合った形で生成AIの活用を進め、業務効率化と新たな価値創出の両立を実現していきましょう。
※本記事は、2026年6月に作成、公開しました。記事の内容は当時のものです。






