東芝の最先端AIをお客様の価値創造にご活用いただきたい。AI技術者として課題解決の際に役立ちたい。より多くの方々に興味を持っていただきたい。そんな思いから始まった「東芝AI技術セミナー」は2023年6月で8回を数え、予想を超える集客数とリピート率で、大きな反響を呼んでいます。
参加者の方々とリアルに会話する形式へのこだわりと、セミナー実現に奔走した仲間への熱い思いを織り交ぜながら、イベント開催の秘訣を探りました。
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課題
- 東芝のAIの認知度を向上させたい
- AIのもたらす顧客価値、それを実現するAI技術に興味を持っていただきたい
- 課題解決にAI技術を活用してほしい
取り組み内容
- AI技術者・AI事業担当者と参加者との対話形式セミナー開催
- メルマガによる集客と、リードの活用
効果
- 東芝AIに対するイメージアップ、ブランディング向上
- ファンの獲得
- 引合い・商談への発展
お話を伺ったお客様
株式会社東芝
執行役員 研究開発センター 首席技監、技術企画部AI-CoEプロジェクトチーム リーダー 堀 修 氏
技術企画部 AI-CoEプロジェクトチーム フェロー 三原 功雄 氏
技術企画部 AI-CoEプロジェクトチーム フェロー 植野 研 氏
東芝のAI技術を広く伝えるために参加者と直接、会話をする場を
東芝AI技術セミナーの開催経緯を教えてください。
東芝のAIは50年以上にわたる研究開発の歴史があります。DXを推進するためにAIは重要な技術であり、東芝グループの事業になくてはならないものとして位置付けています。また、工場・プラントから得られる大量のセンシングデータを解析するためにも不可欠なツールです。一方で、「東芝のAIを活用したサービス・製品の実績・実用化の認知度が不足している」という課題がありました。その対策として社内外へのAIブランディング活動を実施しています。経営の視点では、東芝AI技術セミナー開催について、お客様とのタッチポイントのひとつと考えており、東芝および製品・サービスの認知倍増をゴールに、三原と植野をはじめとする関係者と東芝デジタルマーケティングイニシアティブ株式会社(以下、東芝DMI)に開催・運営してもらうことにしました。
まず、社外の方々と直接的な接点を持ち、交流することができるようなセミナーを開催しよう、ということになりました。これまで報道発表や大規模な展示会の一つの出展アイテムとしてAI技術をアピールしてきましたが、技術者や事業部門の担当者が直接、参加者と交流できる機会はほとんどありませんでした。AIに直接関わっているメンバーが、お客様に提供できる価値を生の声で直接伝えることで、初めて東芝に対するAIのイメージがしっかりと深く伝わる、熱い思いが通じるのでは、と考えました。そこで、私たちが考える「場」を一緒に実現してくれる「仲間」探しを始めたのです。
それぞれの“得意”を持ち寄り、理想的な仲間が集まった
どのようにしてセミナーを開催する「仲間」が結成されたのでしょうか?
私たちは技術や製品のことを語ることはできるのですが、「誰に」「どのように」行動を起こせば、私たちの想いが実現するのか、知見や実績がありませんでした。そこで、社外向けに東芝のオウンドメディア(Toshiba Clip)などから情報を発信しているコーポレートコミュニケーション部 ブランドコミュニケーション室に相談したところ、MAツール(*1)を導入してマーケティング施策を実施したり、大規模展示会の出展業務や顧客情報を管理したりしている営業推進部 デジタル・マーケティング推進室にもお声がけをいただき、AIの技術を担っている、私たちAI-CoEプロジェクトチームとその2部門が連携した三位一体のチームをつくることができました。
さらに、東芝のAIをお伝えする「場」については、東芝DMIが提供する「外部のSaaS型のイベントプラットフォームサービス」を利用することでオンラインセミナーが実現できることを知り、プラットフォームや運用支援の担当としてメンバーに加わってもらいました。東芝DMIは、大規模イベントの企画から運営支援、現場やスタジオからのオンライン配信、映像制作や編集に多数の実績があり、それらに関わる人材や機材が揃っています。また今回のようなMA/CRM(*2)との連携や運営、Web制作についても知見がありましたので、専任担当者に細かくアドバイスしてもらえたり、何か困ったことがあった時にすぐに質問できたりする体制も組んで開催に備えました。
こうして「仲間」が集まり、それぞれの得意なものを持ち寄り、私たちが思い描いていた規模感の、東芝AI技術セミナーの開催が実現したのです。
*1 MA(Marketing Automation) ツール:
新規顧客の獲得や、見込み顧客の育成なども含めたマーケティング活動をサポートするためのツール。主に、顧客情報の管理や見込み顧客との関係性を深耕するための施策を自動化・効率化することができる。
*2 CRM(Customer Relationship Management):
顧客関係管理。顧客情報や行動履歴、顧客との関係性を管理し、顧客との良好な関係を構築・促進することを指す。
お客様にとっての価値を考えること。こだわったのはライブと双方向
セミナーの開催を実現し、成功に導いた秘訣などについて教えてください。
本セミナーでは、質問を受け付け、その場で技術者や事業担当者が答える「双方向のやりとりができるライブ方式」を採用しました。参加者とのライブでの接点を大事にしたい、生の声を届けたり聴いたりしたいという想いは、開催当初から変わることなく、今も続けています。セミナーの内容を聴いて、実際に話した人と技術的な会話ができる、どのようにすれば価値あるものが生まれるかというディスカッションもできる、そういうことがセミナー参加者からの東芝への親しみや信頼感、満足度などの向上につながり、ブランディングにも直結することだと思いました。ただ初めての取り組みで、私たちも手探り状態でしたので、とにかくやってみて、回を重ねるごとに改善していこう!というポジティブな考え方で進めることにしました。
第1回は、東芝DMIから標準的なフォーマットを提供してもらい、セミナーの基礎をつくるスピードを短縮しました。例えばオンラインセミナー会場となるツールの構築や台本作成、進行管理などは、東芝DMIの支援で非常にスムーズに準備することができました。また、開催後に参加者情報やアンケート・資料ダウンロード情報をCRMへ登録するのですが、その手順や実際の作業支援にも東芝DMIに入ってもらいました。
2回目以降は、東芝DMIも含めた定例会を開き、皆で反省点や次回のことについてディスカッションを重ねるようになりました。このトライ&エラーで、セミナーのクオリティと効率が急激に進化したように感じています。普段の仕事も組織も全く異なるメンバーが集まっていますので、顔を見ながら会話をするからこそ理解し合えることも多く、一体感をもって取り組むことができたと考えています。
また、私たちには、テーマと登壇者を決定してセミナー内容を決める、という大切な役目があります。ここで一番大事にしている点は、参加者に提供できる価値とその核となる技術が東芝にある、という旨をセットでお伝えすることです。開催当初は前例がなく、登壇依頼に対して快諾を得るのが難しい状況でしたが、回を重ねて実績が積みあがってきたことで、話が進めやすくなりました。仲間が運営準備や支援における各役割にしっかり対応してくれていますので、私たちはテーマや登壇者、内容の決定に専念できるのです。仲間とのチームワークも参加者からの高い満足度につながる、見えない力なのだと思います。
回を重ねていくうちに、デジタル・マーケティング推進室のメンバーから、コロナ禍でオンラインのセミナー需要が増えたことに加え、250名前後の規模感の双方向ライブが多くの方に受け入れられたように思う、との声がありました。この規模のオンラインイベント開催には、さまざまな苦労もありますが、今に至るまで東芝DMIの皆さんには「こうしたい」「これできない?」という要望や希望、リクエストなどにも迅速に応えていただき、ブラッシュアップしてきました。私たちと東芝DMIとの連動で、効率的でスムーズな準備や運営ができるようになりました。
こうして進めていくうちにAI技術セミナーの「型」が完成しました。
集客数、資料ダウンロード率、アンケート回答率、リピート率。
約250名の参加者の興味と満足度を表す、高い数値
東芝AI技術セミナーの実施効果はいかがでしたか?
2022年度は合計6回のオンラインセミナーを開催し、延べ約2,000名(※1)の方々にご参加いただきました。まず驚いたのは、他のセミナーと比べると資料のダウンロード率やアンケート回答率とセミナー参加のリピート率が高いことでした。ダウンロードやアンケートの回答率は、ちょっと良い程度ではない高いレベルです。満足度は、平均で80点近くを推移しており、集客数も社内関係者を除外して平均で約250名です。アンケートの自由記述欄には応援や改善点も含め、好意的なコメントが大変多く寄せられます。これは、東芝の事業担当者と研究者がリアルで参加者の顔を見ながらディスカッションしたり、身近に感じられる人と人とがつながったりする本セミナーに対する関心の高さと効果の表れだと思います。熱い層が集まり、着実に東芝のファンになってくださっていることも実感しています。とても嬉しいことですね。
執行役員で 研究開発センター 首席技監、技術企画部AI-CoEプロジェクトチーム リーダーでもある堀も、登壇者として「社外の方に東芝の技術や製品を直接ご説明する機会はこれまで多くなかったのですが、Webinarを使って機会が増えてとてもよかったです。開催当日も多くの質問をいただきまして、関心の高さを直接感じることができました」と、本セミナーの効果を感じていました。
また、デジタル・マーケティング推進室は、各回のアンケート集計結果に基づいて、今後お客様となっていただけそうな参加者を見つけ、当該部門に連絡する役割があり、東芝グループの主要なカンパニーと連携し、商談につなげています。このようなケースをもう少し増やしていきたいとのことで、より製品・サービスに特化したオンラインセミナーの開催について希望する声も届いています。今後もソートリーダーシップ(※2)戦略として継続していくことが重要だと考えています。
継続にあたり、東芝DMIの専任担当者とともに本セミナーを安定的に運営出来ることが非常に心強いです。当初は初心者ばかりでしたが、専任担当者のおかげで、今ではランディングページやメルマガ作成、セミナーツール構築などまで、私たちで対応・運用出来るほどになりました。また、集客やコストの観点では課題が残っているものの、計画していたセミナー開催はすべて無事に実現することができましたので満足しています。今後も同社には、改善と支援に協力をお願いしたいです。
※1 延べ約2,000名:
東芝グループの東芝AI技術セミナー関係者を除いた2022年2月の第1回から2023年6月の第8回までの延べ視聴参加人数
※2 ソートリーダーシップ:
企業が特定の課題やテーマに対して、将来を先取りした解決策を提示し、顧客からの共感と評判を生み出すこと
バリエーションを増やし効率化することで、グループ内でも活用を
今後はどのような展開を思い描いているのでしょうか。
今年度は、さらに合計6回の東芝AI技術セミナーを実施予定です。これまでのセミナーの成果として、AIに関する事業側面でのイメージアップを図ることができましたし、「事業×技術」という視点のセミナーがAI関連部門における貴重な実績にもなりました。東芝グループには、ほかにも表舞台へのスタンバイをしている素晴らしいテクノロジーがたくさんありますので、今後はこれを東芝グループ全体で流用していきたいですね。
デジタル・マーケティング推進室からは、AI技術セミナーという「型」ができたので、今後ほかの要望があった時にそれぞれの予算やタイムスパンに対応できるよう、大・中・小のバリエーションを作りたい、とのこと。東芝グループ主要各社のデジタル・マーケティング担当は、人数が非常に限られていますので、将来的には1~2名で簡易的なオンラインセミナーを実施出来るようにしたい。そしてスピード感を持ってリードを獲得、社会に貢献できる製品づくりの橋渡し役になれるように、と思います。そのためにも、東芝DMIには今後も継続して本セミナーをより効率化・最適化する提案を期待します。
これからは、東芝AI技術セミナーの知見をベースに、社外の方々と直に接する濃密な時間を通じて「目からうろこ」のご意見などもいただきながら、相互で向上できる素晴らしい場がもっともっと広がっていくことを思い描いています。私たちの経験とノウハウを東芝グループ内へ共有し、東芝のAI技術が社会の役に立つよう活動を続けていきたいです。